ネットワーク解析オブジェクトとは
ネットワーク解析オブジェクトは、ネットワーク解析クラス内のフィーチャまたはレコードであり、ネットワーク解析レイヤの入力および出力として機能します。ネットワーク解析を効果的に実行するには、ネットワーク解析オブジェクトとその操作方法を知っておく必要があります。
一部のネットワーク解析オブジェクトは、解析に使用する表形式データのみを提供するレコードです。これらは、配車ルート解析レイヤにのみ存在します。また、一部のネットワーク解析オブジェクトは、表形式データだけではなく地理的位置を含んでいるフィーチャです。しかし、ほとんどのネットワーク解析オブジェクトは、表形式データ、地理的位置、およびネットワーク データセットとの関連における位置を持つネットワーク ロケーションです。次のセクションでは、ネットワーク ロケーションについてより詳しく説明します。
ネットワーク ロケーション
ネットワーク ロケーションとは、ネットワークに結びつけられているネットワーク解析オブジェクトの一種であり、そのネットワーク上の位置が解析で入力として使用されます。ルート上のストップなどのネットワーク ロケーションは、ネットワーク上の不連続のポイントにのみ配置できます。また、工事を表すライン バリアなどのネットワーク ロケーションは、1 つ以上のエッジで構成される領域にわたって配置できます。
ポイント ネットワーク ロケーション
ネットワーク ロケーションがポイントである場合、そのネットワーク上の位置は、属性テーブルの次の 4 つのネットワーク フィールドで定義されます。
- SourceID: ネットワーク ロケーションが配置されているソース フィーチャクラスの数値の ID。
- SourceOID: ソース フィーチャの数値の ID。
- PosAlong: ソース ライン フィーチャのデジタイズ方向に沿った位置。この値は比率を表します。ネットワーク ロケーションがジャンクションを参照する場合は NULL です。
- SideOfEdge: ライン フィーチャのデジタイズ方向を基準として定められる、エッジの側。このフィールドがとりうる値は、[右側](1)、[左側](2)のいずれかです。
次の表は、どのネットワーク解析オブジェクトがより正確にネットワーク ロケーションとして定義できるかを示しています。これらのオブジェクトは、ネットワーク解析レイヤ別にグループ化されています。
ネットワーク解析レイヤ |
ネットワーク ロケーション |
---|---|
ルート |
ストップ |
ポイント バリア |
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到達圏 |
施設 |
ポイント バリア |
|
最寄り施設 |
施設 |
インシデント |
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ポイント バリア |
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OD コスト マトリックス |
起点 |
終点 |
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ポイント バリア |
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配車ルート |
訪問先 |
拠点 |
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ポイント バリア |
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ロケーション-アロケーション |
施設 |
需要地点 |
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ポイント バリア |
ネットワーク ロケーションの例:ルート ストップ
ネットワーク ロケーション フィールドに関する理解を深めるため、次の例を検証します。ルートの開始と終了を表す 2 つのポイント(下の図では 1 と 2)は、ルート解析レイヤではストップとして読み込まれます。ポイントが直接道路上になくても、ネットワーク上の最も近い位置が検出され、ストップの 4 つのネットワーク フィールドに数値として格納されます。次に、最適なルートを検出するためにルート解析が実行されます。結果として得られたルートは、ネットワーク上のストップ 1 に最も近い位置(ポイント a)から開始し、ネットワーク上のストップ 2 に最も近い位置(ポイント b)で終了します。
上の例では、ストップ 1 と 2 は、それぞれポイント a と b でネットワークに接続されているネットワーク ロケーションです。下の属性テーブルは、それぞれのネットワーク フィールドを示しています。
SourceID フィールドは、ネットワーク ロケーションが配置されているネットワーク データセットのソース フィーチャクラスを示しています(この例では Streets)。SourceOID は、ネットワーク ロケーションが配置されている特定の道路フィーチャの Object ID を示しています(この例では 6460 と 6746)。PosAlong は、ストップ 1 がソース フィーチャに沿って 47.8 パーセントの位置にあることを示し、SideOfEdge は、それがラインのデジタイズされた方向を基準とするとフィーチャの左側にあることを示しています。同様に、ストップ 2 は、道路 6746 の右側にあり、道路 6746 に沿って 45.2 パーセントの位置にあります。
ネットワーク ロケーション範囲
ネットワーク ロケーションがラインである場合、そのネットワーク上の位置は、Locations という単一の BLOB フィールドで定義されます。このフィールド内の情報は、オブジェクトによってどのエレメントがカバーされているか、および各エッジ エレメントのどの部分がカバーされているかを定義します。BLOB 内の情報の取得および解釈については、ここでは説明しませんが、ArcObjects に対してプログラミングを行うことで、それを行うことは可能です。
より正確にネットワーク ロケーションとして定義できる唯一のラインベースのネットワーク解析オブジェクトは、ライン バリアとポリゴン バリアです。
ポリゴンをリニア ロケーションとして分類することは最初は不適切に思えますが、ネットワークは 1 次元であることを考慮してください。ポリゴンは 2 次元ですが、ネットワークはポリゴンのネットワークと重なっている部分しか使用できません。したがって、ArcGIS Network Analyst エクステンションは、ポリゴンを内部的にネットワークと交差させて、ポリゴンをライン(または場合によってはポイント)へと簡略化し、ネットワーク ロケーション範囲に変換します。Network Analyst がどのようにポリゴンを保存するかに関係なく、ArcGIS は引き続きポリゴンをマップ上でポリゴンとして描画します。
検索許容値とスナップ環境
検索許容値およびスナップ環境のプロパティを使用すると、追加または移動したネットワーク ロケーションのネットワーク上の場所を検出できます。これらのプロパティは、ネットワーク解析レイヤの一部であり、[レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスの [ネットワーク ロケーション] タブにあります。
ネットワーク解析レイヤの [レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスを開く方法の詳細
検索許容値とスナップ環境は、デフォルト値が適切ではない場合は、解析レイヤの作成時に設定する必要があります。これにより、解析の入力がネットワーク上に確実に配置されます。これらの設定値は、次の操作を実行するときに使用されます。
検索許容値
検索許容値は、ArcGIS がポイント ネットワーク ロケーションを配置するネットワーク エレメントを検索するときの最大半径を指定します。デフォルトの許容値は 5,000 メートルです。ポイントが検索許容値の範囲外にある場合、ネットワーク ロケーションは配置されず、それはネットワーク上の位置を持たないため、解析に適切に含めることができません。
ライン バリアなどのネットワーク ロケーション範囲は、検索許容値の影響を受けません。つまり、ネットワーク ロケーションの範囲は、影響を受けるには、ネットワークに正確に重なっている必要があります。
下の図では、検索許容値は、2 つのポイントが配置されるときに 50 メートルに設定されています。1 つのポイントは、どのネットワーク フィーチャからも 50 メートル以上離れているため、配置されていません。
次の図では、検索許容値がより高い値(100 メートル)に設定されているため、両方のポイントが配置されています。
ネットワーク ロケーションのスナップ環境
特定のソース フィーチャにストップを配置する必要がある場合があります。たとえば、道路ではなくジャンクションにストップを配置したり、マルチモーダル ネットワークにストップを配置するときに線路ではなく道路でストップを配置したりする必要がある場合があります。また、ジャンクションにストップを配置する必要があることもあれば、検索許容値内にジャンクションがない場合は道路にストップを配置する必要がある場合もあります。
ポイント ネットワーク ロケーションは、それを表すシンボルがネットワーク上にない場合でも、常に直接ネットワーク上に配置されます。ネットワーク ロケーション フィールドは、オブジェクトのネットワークにおける正確な位置を示します。ネットワーク ロケーション シンボルを、ネットワーク ロケーション フィールドが参照するポイントにスナップするには、Network Analyst オプションを変更します。Network Analyst オプションには [Network Analyst] ツールバーのドロップダウン メニューからアクセスします。ここで、[ネットワークに沿って位置をスナップ] をオンにし、任意のオフセットを割り当てることができます。
ネットワーク データセットに複数のソースが含まれる場合は、ネットワーク エレメントの配置に使用するソース フィーチャクラスを選択できます。複数のソースの中から最近接のネットワーク エレメントを検索するには、[最近接] をクリックし、検索するソースごとに [スナップ先] テーブル内で少なくとも 1 つのチェックボックスをオンにします。ネットワーク ロケーションをフィーチャ(Shape)に沿って最近接の場所に配置するか、ネットワーク エレメントの中間に配置するか、またはネットワーク エレメントの端点に配置するかを、ソースごとに選択できます。
これに対して、1 つのソースの最近接エレメントにスナップし、そのソース内のエレメントが検索許容値内で見つからなければ、別のソースの検索許容値内にある最近接エレメントにスナップするといった具合に設定することができます。このためには、[ネットワーク ロケーションの検索] セクションの [先頭のソース] をクリックし、[スナップ先] テーブルで少なくとも 2 つのソースのチェックボックスをオンにします。
テーブル内のソースの順序を並べ替えるには、ソースを選択し、右側にある上方向ボタンと下方向ボタンを使用します。
上の図の設定を使用してネットワーク ロケーションを検出する方法を下の図に示します。
ジャンクション ソースをオンにするだけで、交点にスナップするようにこれらの設定を変更できます。たとえば、ネットワーク ロケーションが会社の施設を表すソース フィーチャに常に配置されるようにする場合は、代わりにそのソースをオンにすることができます。
検索条件設定を使用するスナップ環境
検索をソース フィーチャクラス内のフィーチャのサブセットに制限するクエリを定義することもできます。この機能は、ネットワーク ロケーションとして適切でないフィーチャを検索したくない場合に有用です。たとえば、ポリゴンの重心を読み込む場合に、生活道路に配置したくない場合は、一般道路のみを検索するクエリを定義できます。
検索条件設定にアクセスするには、[ネットワーク ロケーションの検索] パネルでネットワーク ソース フィーチャクラスを右クリックし、[検索条件設定] を選択します。
[検索条件設定] ダイアログ ボックスの機能は、[属性検索] ダイアログ ボックスと同様です。
ネットワークの制限部分の除外
このオプションをオンにすると、ネットワーク ロケーションがネットワークの通過可能な部分にのみ配置されます。これにより、規制またはバリアが原因で到達できないエレメントにネットワーク ロケーションが配置されなくなります。
スナップ環境とネットワーク ロケーション範囲
ライン バリアなどのネットワーク ロケーション範囲の場合、ネットワーク解析オブジェクトがどのソース フィーチャクラスに配置されるかはスナップ環境によって決定されます。ネットワーク ロケーション範囲はそれが重なるエレメントにのみ配置されるため、検索許容値は無視されます。
「道路」と「線路」という 2 つのソース フィーチャクラスがある場合、「線路」をオフにすると、それ以降に追加するライン バリアまたはポリゴン バリアは道路のみに配置されます。追加するバリアが線路と重なっていても、線路には配置されません。
ネットワーク ロケーションを使用した読み込み
ネットワーク ロケーションが作成されるとき、ネットワーク ロケーション フィールドは、空間検索を使用して計算されます。
あらかじめ配置されているネットワーク ロケーションを読み込む場合、ロケーション フィールドにはネットワーク ロケーションを再び配置するのに必要なすべての情報が含まれています。したがって、そのネットワーク ロケーション フィールド値をコピーして、比較的低速な空間検索を回避することができます。
ネットワーク ロケーション フィールドは、別のネットワーク解析でフィーチャを使用した場合、または [ロケーション フィールドの計算(Calculate Locations)] ジオプロセシング ツールを実行した場合は、すでに存在しています。
ロケーション フィールドは、読み込み時、同じネットワーク データセットを参照するネットワーク解析レイヤ同士でのみ使用できます。さらに、ネットワーク データセットのネットワーク上の位置が決定された後にネットワーク データセットを再構築することはできません。再構築すると、ネットワーク ロケーション フィールドは不適切なソース フィーチャを参照するようになる可能性があります。
ArcGIS は、デフォルトでは、解析レイヤ間で多数のネットワーク ロケーションをコピーし、貼り付けるときに、ロケーション フィールドを使用します。たとえば、ルート解析レイヤにストップとして 100 個のポイントを読み込み、同じストップを最寄り施設解析レイヤで施設として使用する場合は、空間検索を使用してポイント フィーチャクラスから読み込むよりも、ルート レイヤからロケーションをコピーし、最寄り施設レイヤに貼り付ける方がより高速です。
未配置のネットワーク ロケーション
ポイント ネットワーク ロケーション(ストップなど)は、それが作成または移動されたときにそのジオメトリがネットワーク データセットのソース フィーチャの検索許容値内であった場合は、有効なネットワーク上の位置のみを参照します。Network Analyst のデフォルトの検索許容値は 5,000 メートルです。この検索許容値は、より狭く、または広く変更することができます。検索許容値の範囲内にネットワーク フィーチャが存在しない場合、ネットワーク ロケーションのステータスは「未配置」に設定されます。
選択ネットワーク ロケーションの再配置
検索許容値またはスナップ先設定を変更した後でネットワーク ロケーションを再配置することや、現在配置されていないネットワーク ロケーションを配置することが必要になる場合もあります。これを行うための 2 つの一般的な方法は、ネットワーク ロケーションを移動する方法とロケーション フィールドを再計算する方法です。
ネットワーク解析オブジェクトのプロパティ
ネットワーク解析オブジェクトのプロパティは、複数の異なる目的に使用されます。入力するプロパティ値は、解析に使用される入力として機能します。これには、ネットワーク ロケーションを追加または移動すると自動的に計算されるネットワーク ロケーション フィールドが含まれます。一部のプロパティは、解析用の出力のコンテナとして機能します。したがって、解析の実行後、出力フィールドで結果を検証できます。入力と出力の両方の目的に使用される入力/出力フィールドもあります。
ネットワーク解析クラスの属性テーブル、または個々のネットワーク解析オブジェクトの [プロパティ] ウィンドウを使用して、入力を設定し、出力を検証することができます。
ネットワーク解析オブジェクトのプロパティの表示および編集の詳細
[プロパティ] ウィンドウには、Network Analyst ウィンドウに表示されているオブジェクトをダブルクリックすることでアクセスできます。ただし、ネットワーク解析オブジェクトが常に Network Analyst ウィンドウに表示されているとは限りません。たとえば、1 つのクラスに何千ものネットワーク解析オブジェクトがある場合、それらは Network Analyst ウィンドウに表示されません。一部のクラスには、OD コスト マトリックスのラインのように、多数のオブジェクトを持つ傾向があるため、個々のライン オブジェクトが Network Analyst ウィンドウに表示されることはありません。このような場合は、属性テーブルを使用してフィールド値を表示する必要があります。