ラスタ ピラミッド
ピラミッドは、パフォーマンスを向上させるために使用されます。ピラミッドは、元のラスタ データセットのダウンサンプル バージョンであり、多くのダウンサンプル レイヤを含むことができます。ピラミッドの一連のレイヤは 2:1 の縮尺でダウンサンプリングされます。次に、1 つのラスタ データ セットに対して作成された 2 つのレベルのピラミッドの例を示します。
ピラミッドは、表示に必要な特定の解像度でのみデータを取得することで、ラスタ データの表示速度を高めることができます。ピラミッドを使用すると、データセット全体がより低い解像度を使用してすばやく描画されます。データを拡大するにつれ、レイヤはより高い解像度で描画されます。小さい領域を連続的に描画するため、パフォーマンスが維持されます。データベース サーバは、ユーザの表示縮尺に基づいて、最適なピラミッド レベルを自動的に選択します。ピラミッドがない場合は、データセット全体をディスクから読み込み、より小さいサイズにリサンプリングする必要があります。この処理はディスプレイ リサンプリングと呼ばれ、ArcGIS ディスプレイが更新されるときに行われます。
ピラミッドはラスタ データセットごとに一度だけ構築します。それ以降は、ラスタ データセットが表示されるたびに、ピラミッドが使用されます。ラスタ データセットが大きいほど、ピラミッドの作成に時間がかかります。ただし、長期的にみれば、時間の節約にもなります。
ラスタ カタログのピラミッドを構築することはできませんが、ラスタ カタログ内のラスタ データセットごとにピラミッドを構築することが可能です。モザイク データセットの場合は、ラスタ カタログと同様に、モザイク データセット内のラスタ データセットごとにピラミッドを構築できます。モザイク データセットの概観図を作成することはできますが、これは [モザイク データセット] ツールセット内の特定のツールを使用した場合に限られます。
ピラミッド ファイル
ピラミッドは、通常はソース ラスタの横にある 1 つのファイルに格納されます。ピラミッド ファイルには、概観図(*.ovr)と低解像度データセット(*.rrd)との 2 つのタイプがあります。ArcGIS は両方のタイプのピラミッド ファイルを読み取ることができますが、書き込みは *.ovr ファイルに対してのみ行うことができます。ただし、これにはいくつかの例外があります(下記を参照)。
*.rrd ファイルは、ERDAS IMAGINE ファイルに対して作成されます。
*.ovr ファイルは、バージョン 10 以降の ArcGIS によって作成され、使用されます。*.ovr ファイルの 1 つの向上点は、LZ77 または JPEG で圧縮できることです。JPEG 圧縮は、JPEG の仕様に従ってデータを格納できるファイル タイプでのみ使用できることにご注意ください。JPEG ピラミッドが選択された場合は、JPEG ピラミッドの圧縮品質も指定できます。
概観図ファイルは、圧縮されていない元のファイルの約 8 パーセントのサイズです。ピラミッドが圧縮されると、*.ovr ファイルのサイズはさらに小さくなる場合があります(2% など)。*.ovr ファイルの場合は、圧縮がデータの均質性に依存するため、ファイルのサイズを推定することは困難です。
次に、各種圧縮タイプごとに、ピラミッド レベルによるラスタ データセットのストレージ サイズの増加例を示します。レベル 0 は元のラスタ データセットです。
レベル |
圧縮なし |
LZ77 圧縮 |
JPEG 圧縮 |
---|---|---|---|
0 |
1.0 GB |
1.0 GB |
1.0 GB |
1 |
1.0655 GB |
1.0483 GB |
1.0133 GB |
2 |
1.0824 GB |
1.0606 GB |
1.0169 GB |
3 |
1.0866 GB |
1.0637 GB |
1.0179 GB |
4 |
1.0877 GB |
1.0645 GB |
1.0182 GB |
5 |
1.0880 GB |
1.0647 GB |
1.0183 GB |
6 |
1.0881 GB |
1.0647 GB |
1.0183 GB |
JPEG 2000、ECW、MrSID などのウェーブレット圧縮ラスタ ファイル形式には、内部ピラミッドがあります。一般的に、これは、ArcGIS を使用してピラミッドを作成できないことを意味します。ただし、JPEG 2000 の場合はピラミッドを作成できます。また、ウェーブレット圧縮されているジオデータベース ラスタでも、ピラミッドを作成することができます。
軍事用データについては、ピラミッドの作成はあまりお勧めできません。詳細については、「モザイク データセットの作成と軍事用データの追加」をご参照ください。
ピラミッドのリサンプリング手法
ピラミッドのリサンプリング手法には、最近隣内挿法、共一次内挿法、三次たたみ込み内挿法の 3 つがあります。最近隣内挿法はデフォルトの手法であり、通常はどのタイプのラスタ データセットにも対応します。ただし、土地利用データ、スキャン マップ、疑似カラー イメージなどの不連続(名目)データやカラーマップを持つラスタ データセットには、最近隣内挿法を使用することをお勧めします。衛星画像や航空写真などの連続データには、共一次内挿法または三次たたみ込み内挿法を使用します。共一次内挿法のほうが高速ですが、三次たたみ込み内挿法ほど鮮明な結果は得られません。1 ビット TIFF または IMG には共一次内挿法の使用を推奨します。
モザイク化とラスタ データセットの原点
ArcSDE またはファイル ジオデータベースでラスタ データをモザイク化する際には、ラスタ データがラスタ データセットにモザイク化されるときにラスタ データセットを基にピラミッドを構築することができます。また、読み込みが完了したときに構築することもできます。ArcGIS では部分的なピラミッドの構築が可能であり、モザイク処理の際にソース データとオーバーラップする部分のみのピラミッドを再構築します。新しいラスタ データセットが追加された場合、ピラミッドの再構築にラスタ データセット全体が必要になることはないので、この機能はモザイク化されたラスタ データセットの更新に役立ちます。ただし、ラスタ データセットの原点(ピラミッド リファレンス ポイント)でデータを更新する場合は、ラスタ データセット全体を対象にピラミッドを再構築する必要があります。
ラスタ データセットの原点は、ラスタ データセットの左上隅の座標です。ピラミッドの構築はこの座標から始まり、右下へと進みます。データのラスタ データセットの原点の左または上へのモザイク化では、ピラミッド リファレンス ポイントが左上隅の座標になるように ArcSDE でポイントをシフトする必要があります。既存のラスタ データセットの原点をシフトするには、ArcSDE でピラミッドを再構築する必要があります。ピラミッドの再構築は時間のかかる操作です。すでにモザイク化されているラスタ データセット ソース ファイル(または他のラスタ データセット)の数によりラスタ データセットが増大している場合は、特に時間がかかります。
ピラミッドの再構築はこのように時間のかかる操作なので、ソース データの解析を通じてラスタ データセットの左上のラスタ座標を特定し、ラスタ データセットの作成時に入力する必要があります。ラスタ データセットの作成時には、最初に挿入されるラスタ データセットの左上の座標を使用するのでなく、ピラミッド リファレンス ポイントの X 座標と Y 座標を設定します(「ラスタ データセットの作成」を参照)。ラスタ データセットの作成時にピラミッド リファレンス ポイントを設定することにより、ラスタ データセットの原点をシフトせずに済みます。