ラスタ データのカラー補正
カラー補正は、各ラスタ データセットを単一のシームレスなイメージとして表示する場合に役立つことがあります。これは、既存のラスタ カタログまたはモザイク データセットに適用できます。
ここでは、ラスタ カタログを使用したカラー補正について説明します。モザイク データセットのカラー補正の手順については、「モザイク データセットのカラー補正」をご参照ください。
カラー補正を適用するには、カラー調整およびカラー マッチングという 2 つの手法を使用することができます。カラー調整は、各ラスタ データセットのコントラストと色を調整して参照ラスタに合わせます。カラー マッチングでは、統計情報のマッチング、ヒストグラムのマッチング、または線形相関という 3 つの手法のいずれかを使用して各ソース ラスタ データセットとのマッチングを行う参照ラスタ データセットを使用します。カラー マッチングは 2 つのプロセスから構成されます。まず重複するエリアのマッチング計算を決定し、次に残りのラスタ データセットに対してピクセル値を内挿します。
カラー補正は、ラスタ カタログ レイヤまたはモザイク化されたラスタ データセットの作成時に適用することができます。
- リアルタイム補正:ラスタ カタログが ArcMap に追加された場合、またはレイヤが作成された場合は、[レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスに [カラー補正] タブがあります。このタブで、ラスタ カタログ レイヤのカラー補正設定を定義することができます。必要に応じて、モザイク データセットにカラー補正を適用することができます。
- 保存された結果:ArcMap では、コンテキスト ダイアログ ボックスからモザイク化されたラスタ カタログをラスタ データセットとして出力することができます。[モザイク ラスタ カタログ] ダイアログ ボックスで、モザイク化されたラスタ データセットの作成時に [プロパティ ページのカラー補正設定を適用] チェックボックスをオンにすることができます。
- 「ラスタ カタログ → ラスタ データセット(Raster Catalog To Raster Dataset)」、「モザイク(Mosaic)」、「ワークスペース → ラスタ データセット(Workspace To Raster Dataset)」には、ラスタ データセットの作成時に適用するカラー補正を定義できるパラメータが含まれています。
カラー補正は、データに次の条件が当てはまる場合にのみ行うことができます。
- すべてのバンドの統計情報が計算されている。
- すべてのバンドのヒストグラムが作成されている。
- すべてのラスタ データベースに同じ数のバンドがある。
- すべてのラスタ データベースに同じピクセル タイプとピクセル深度がある。符号なし 8 ビットと符号なし 16 ビットのビット深度のみサポートされます。
- どのラスタ データベースにもカラー マップが関連付けられていない。
事前ストレッチ
カラー補正を実行する前に、各ラスタ カタログまたはモザイク データセット アイテムに対して事前ストレッチを実行することができます。この設定により、カラー補正処理において、元のラスタ カタログ アイテムが未処理のピクセル値ではなく、ストレッチされたピクセル値を使用するようになります。カラー補正を適用する前に、期待される分布に色を変更したい場合は、このオプションを使用することをお勧めします。
ラスタ カタログでは、[カラー調整] または [カラー マッチング] チェックボックスのいずれかがオンになっている場合、[事前ストレッチ] チェックボックスが利用可能になります。モザイク データセットでは、このオプションは [モザイクのカラー補正] ウィンドウで、[モザイク データセットのカラー調整] ツールによって利用可能になります。次の 3 つの事前ストレッチ方法を指定できます。
- 適応型ストレッチ - ガンマ コントラスト ストレッチを使用して、ラスタ カタログ アイテムを事前ストレッチします。
- 最小値 - 最大値ストレッチ - 最小値 - 最大値コントラスト ストレッチを使用して、ラスタ カタログ アイテムを事前ストレッチします。
- 標準偏差ストレッチ - 2 標準偏差コントラスト ストレッチを使用して、ラスタ カタログ アイテムを事前ストレッチします。
カラー調整
カラー調整では、次の 3 つの手法のいずれかを使用して、ラスタ カタログ アイテムまたはモザイク データセットの色を補正します。3 つの手法とは、ドッジング バランシング、ヒストグラム バランシング、標準偏差 バランシングです。
- ドッジング バランシング - これは従来から写真測量で使用されているドッジング手法で、各ピクセル値をターゲット カラーに向けて調整します。各ピクセル値は、出力ピクセル値の決定に使用されます。[ドッジング] を選択した場合、使用するターゲット カラーの サーフェス タイプも選択する必要があり、この選択が、ターゲット カラーの色合いに影響を与えます。多くの場合、ドッジング バランシングにより適切な結果を得ることができます。
- ヒストグラム バランシング - この手法では、ターゲットのヒストグラムに合わせて、各ピクセル値を調整します。ターゲットのヒストグラムをラスタ カタログ アイテムから自動的に計算するか、ターゲット ラスタを指定することもできます。ヒストグラム バランシングは、すべてのラスタ カタログ アイテムのヒストグラム形状が近似している場合に適しています。
- 標準偏差バランシング - この手法では、標準偏差の計算値に合わせて、各ピクセル値を調整します。標準偏差値は、ラスタ カタログ アイテムから自動的に計算するか、指定したターゲット ラスタから計算することができます。標準偏差バランシングは、すべてのラスタ カタログ アイテムの正規化された値のヒストグラム分布が同じ場合に適しています。
ターゲット カラー サーフェスは、ドッジング バランシングを選択した場合のみ使用できます。ドッジング手法を使用する場合は、各ピクセルにターゲット カラーが必要で、これはターゲット カラー サーフェスから取得します。選択可能なターゲット カラー サーフェスには、単一色、カラー グリッド、一次平面、二次平面、三次平面の 5 つのタイプがあります。単一色、カラー グリッド、一次平面、二次平面、三次平面です。
- 単一色 - すべてのピクセルが 1 つのカラー ポイント(平均値)に合わせてドッジングされます。単一色のサーフェスは、ほんの数種類の地上物質を含むラスタ カタログ アイテムが、ごく少数存在している場合に適しています。ラスタ カタログ アイテムの数が多すぎたり、地上に存在する物質の種類が多すぎると、出力される色合いが不鮮明になる可能性があります。
- カラー グリッド - ラスタ カタログ全体に分散するポイント セット(ラスタ カタログ全体に分散)に合わせて、すべての入力ピクセルをドッジングします。カラー グリッドは、多様な地上物質を含む、非常に多くの数のラスタ カタログ アイテムまたは領域のカラー調整に適しています。
- 一次サーフェス - 二次元多項傾斜面から取得した多数のポイントに合わせて、すべての入力ピクセルをドッジングします。カラー グリッドのサーフェスと比較すると、多項式によるサーフェスは色の変化が滑らかで、補助テーブルの格納スペースの使用域を減少できる一方、処理に時間がかかる傾向があります。
- 二次サーフェス - 二次元多項パラボリック/双曲線/楕円表面から取得したポイント セットに合わせて、すべての入力ピクセルをドッジングします。カラー グリッドのサーフェスと比較すると、多項式によるサーフェスは色の変化が滑らかで、補助テーブルの格納スペースの使用域を減少できる一方、処理に時間がかかる傾向があります。
- 三次サーフェス - 立方体面から取得した複数のポイントに合わせて、すべての入力ピクセルをドッジングします。カラー グリッドのサーフェスと比較すると、多項式によるサーフェスは色の変化が滑らかで、補助テーブルの格納スペースの使用域を減少できる一方、処理に時間がかかる傾向があります。
[参照ターゲット イメージを使用] チェックボックスを使用して、ラスタ カタログ アイテムまたはモザイク データセット アイテムの調整に使用するターゲット ラスタを指定できます。このチェックボックスをオンにすると、ターゲット イメージを指定できます。このチェックボックスがオフの場合は、ターゲットが自動的に計算されます。
- ドッジング バランシングの使用時 - 出力されるターゲット カラーは、選択されたターゲット カラー サーフェスのタイプによって異なります。単一色の場合、参照ターゲット イメージの平均値が使用されます。カラー グリッドの場合、参照ターゲット イメージを適切なグリッドにリサンプリングします。多次元多項式によるサーフェスの場合、多項式の係数は最小二乗フィッティングによって、参照ターゲット イメージから取得されます。
- ヒストグラム バランシングの使用時 - ターゲット ヒストグラムは参照ターゲット イメージから取得されます。
- 標準偏差バランシングの使用時 - ターゲットの標準偏差は参照ターゲット イメージから取得されます。
[コントラストの調整を適用] チェックボックスを使用して、出力カラーの補正結果にコントラスト ストレッチを適用します。このチェックボックスをオンにすると、コントラスト ストレッチが適用されるので、くっきりとした出力になります。
カラー マッチング
カラー マッチングは、参照ラスタとソース ラスタ間のオーバーラップ領域をマッチングします。オーバーラップ領域でマッチング アルゴリズムが決定されると、それがソース ラスタに適用されます。カラー マッチングでは、3 つの手法のいずれかを使用して、参照ラスタからソース ラスタに適切なカラー マッチの内挿を行えます(下記を参照)。
色調整の要件に加えて、カラー マッチングを実行できないシナリオが 2 つあります。
- 参照ラスタとソース ラスタの間にオーバーラップ部分が十分に存在していない場合。
- 参照ラスタとソース ラスタの間に十分な相関がない場合は、線形相関手法を使用できません。この場合は、代わりに別のマッチング手法を選択することができます。
カラー マッチングはモザイク データセットでは使用できません。ラスタ カタログの場合のみ有効です。
カラー マッチングの最初の手順では、参照ラスタ カタログ アイテムを自動または手動で決定します。参照ラスタと隣接ソース ラスタ データセット間のオーバーラップ領域で、選択したマッチング手法を実行して、必要な色変換が決定されます。この変換は、すべてのソース ラスタに適用されますが、参照ラスタの元のピクセル値は変更されません。この処理は、カタログ内のすべてのラスタでこの色変換が行われるまで継続されます。
次の画像は、画像にオーバーラップ領域が存在し、色がわずかに異なる 2 つのラスタ データセットを示しています。カラー マッチングでは、1 つのイメージを選択し、もう一方のイメージ(参照ラスタ)の色に一致させることができます。最初の手順では、参照ラスタを選択します。この例では、黄色のアウトラインのラスタ データセットが参照ラスタ データセットとして選択されています。青のアウトラインのラスタ データセットはソース ラスタ データセットであり、参照ラスタの色とのマッチングが行われます。
次の手順では、オーバーラップする領域をカラー マッチングします。黄色と青のアウトラインが重なるエリアに対してのみ、カラー マッチング処理が実行されます。変換アルゴリズムが決定された後、ソース イメージに対して変換が実行されます。参照ラスタの元のピクセル値は変更されません。
カラー マッチング処理には、3 つのマッチング手法があります。
- 統計情報 マッチング — この手法では、参照するオーバーラップ領域とソースのオーバーラップ領域の間の統計的な差異をマッチングしてから(最小、最大、平均を使用)、ソース データセットに色変換が適用されます。
- ヒストグラム マッチング — この手法では、参照するオーバーラップ領域のヒストグラムとソースのオーバーラップ領域をマッチングしてから、ソース データセットに色変換が適用されます。
- 線形相関マッチング — この手法では、オーバーラップするピクセルがマッチングされ、残りのソースが内挿されます。1 対 1 の関係を持たないピクセルには、加重平均が使用されます。1 対 1 関係を持たないピクセルでは、加重平均が使用されます。
参照ラスタは、元のピクセル値が変更されないラスタ カタログ アイテム(ラスタ データセット)です。コントラスト ストレッチを使用すると、参照ラスタの色合いが変わりますが、実際の値は変更されません。ソース ラスタ データセットは、参照ラスタの品質に準じます。参照ラスタは、アルゴリズムで自動的に選択するか、[レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスを使用して手動で選択することができます。