コスト距離解析について
セルの観点からコスト ツールの目的は、解析 ウィンドウの各セル位置について、ソースに到達するまでのコストが最も小さい経路を特定することです。ソースまでの最小累積コスト パス、最小コスト パスの対象となるソース、および最小コスト パス自体をセルごとに決定する必要があります。
コスト距離ツールはユークリッド ツールと似ていますが、ユークリッド ツールはある場所から別の場所までの実際の距離を計算するのに対し、コスト距離ツールは各セルから最も近いソース位置までの最短加重距離(累積移動コスト)を求めます。これらのツールは、地理的単位ではなく、コスト単位で表された距離を適用します。
いずれのコスト距離ツールについても、ソース データセットとコスト ラスタを入力として指定する必要があります。
コスト距離の出力
この後のセクションでは、それぞれのコスト距離ツールから得られる出力について説明します。
距離の出力
[コスト距離(Cost Distance)] ツールの出力では、各セルから最寄りソースまでの累積コストが記録されます。
たとえば、次のようなソースの位置があるとします。この図では、値 1、値 2 として表されています。
ソース セル 1(オレンジ色)から目的地(学校アイコン)までの累積最小コスト経路は 10.5 になります。
バック リンク方向の出力
コスト距離の出力ラスタでは、各セルから最寄りのソース位置までの累積コストが特定されますが、どのソース セルへどのように到達するかは示されません。[コスト バック リンク(Cost Back Link)] ツールは、出力として方向ラスタを返します。これは、任意のセルから最寄りソースまでの最小コスト経路を示すロード マップです。
バック リンク ラスタを計算するアルゴリズムでは、各セルに 0 ~ 8 の整数コードが割り当てられます。値 0 はソース位置を表します。つまり、すでに目的地(ソース)に到達していると見なされます。値 1 ~ 8 は、右側から時計回りにそれぞれ 8 つの方向を表します。方向の出力に適用されるデフォルト シンボルは次のとおりです。右側の矢線図は、カラー シンボルに対応する方向矢印を示しています。
たとえば、ソースへの最小コスト パスの一部として、出力セルに値 5 が割り当てられている場合、そのパスは左側の隣接セルへ移動します。また、セルの値が 7 の場合は北方向へ移動します。
前のセクションの例で、値 10.5 のセルからソース(学校)までの最小コスト経路は、値 5.7 のセルを通って対角に移動する方法です。バック リンク ラスタは、各セルから最寄りソースまでの移動方向を示しています。
方向アルゴリズムにより、値 10.5 のセルには値 4 が割り当てられ、値 5.7 のセルにも値 4 が割り当てられます。これらの各セルからソースへ最小コストで到達するには、(前述の方向コーディングに基づき)この値の方向へ移動する必要があるためです。
出力バック リンク ラスタのすべてのセルについてこの処理が実行され、コスト距離ラスタの各セルからソースへの移動方向を示す出力が生成されます。
出発地から目的地までの最小コスト(最短)パスを計算する場合は、コスト距離ラスタとコスト バック リンク ラスタが両方とも必要になります。
アロケーション出力
[コスト アロケーション(Cost Allocation)] ツールの出力は、各セルに最も近いソースはどれかを表します。理論的には [ユークリッド アロケーション(Euclidean Allocation)] ツールの出力と同じですが、近接性が累積移動コストで表される点が異なります。
オプション出力
それぞれのツールに固有の出力ラスタに加え、必要であれば、別のタイプのコスト出力を作成することもできます。[コスト距離(Cost Distance)] ツールではコスト バック リンク ラスタを作成でき、[コスト バック リンク(Cost Back Link)] ツールではコスト距離ラスタを作成できます。また、[コスト アロケーション(Cost Allocation)] ツールでは、距離ラスタとバック リンク ラスタを両方作成できます。特定のツールの実行時に、他の出力も作成する必要がある場合に役立ちます。
コスト パス ツール
累積コスト ラスタとバック リンク ラスタを作成したら、指定した目的地のセルまたはゾーンから、任意の最小コスト パスが得られます。[コスト パス(Cost Path)] ツールは、目的地のセルからバック リンク ラスタを経由してソースまで追跡します。
コスト距離の入力
ソースの入力
ソース データセットがラスタの場合、1 つまたは複数のゾーンが含まれている可能性があります。さらに、これらのゾーンは、隣接している場合と隣接していない場合があります。値(0 を含む)を持つすべてのセルは、ソース セルとして処理されます。ソース ラスタで、ソース セル以外のすべてのセルには NoData を割り当てる必要があります。ソース位置(ラスタまたはフィーチャ)に割り当てられている元の値は維持されます。
ソース データセットがフィーチャ データセットの場合、その環境で指定されている解像度に従い、内部でラスタに変換されます。解像度が明示的に設定されていない場合は、入力コスト ラスタの解像度が適用されます。ソース データがラスタの場合は、そのラスタのセル サイズが使用されます。これ以降、フィーチャ ソース データがラスタに変換されているものとして説明します。
入力ラスタまたはフィーチャ ソース データのソース数に制限はありません。
コストの入力
コスト ラスタは単一のラスタであり、通常は複数のラスタを結合したものです。コスト ラスタの単位は、どのような種類でもかまいません(ドル コスト、時間、消費エネルギー、他のセルのコストに基づいてその有意性を特定する単位なしシステムなど)。入力コスト ラスタとして、整数値または浮動小数点値を使用できますが、負の値や 0 は使用できません(負またはゼロのコストは指定できません)。このアルゴリズムは乗算過程なので、コスト ラスタに値 0 を含めることができません。
コスト ラスタに値 0 が含まれており、それらの値が最小コストを表している場合は、それらの値を小さい正の値(0.01 など)に変更してから [コスト距離(Cost Distance)] ツールを実行してください。そのためには [Con] ツールを使用します。値 0 のエリアが解析から除外するエリアを表している場合は、まず [Set NULL] を実行して、それらの値を NoData に変更します。その後で [コスト距離(Cost Distance)] を実行してください。
コスト距離の計算方法について詳しくは、以下のセクションをご参照ください。