LIDAR カバレッジおよびサンプル密度の評価
データ プロバイダ提供の LIDAR ポイントによって予期されるカバレッジと密度を確保できるようにすることは、LIDAR データ受信時の基本 QA/QC 工程の 1 つです。カバレッジと密度の問題をチェックし、それを LIDAR 処理の初期段階で解決することが重要になります。これに関しては、LAS データセットと 2 つのジオプロセシング ツール([ポイント ファイルの空間統計情報(Point File Information)] および [LAS ポイント統計をラスタに出力(LAS Point Statistics As Raster)])が役立ちます。
LAS データセット
個々の LIDAR プロジェクトのデータは通常、タイル化された LAS ファイルのコレクションに分割されます。これは、処理の利便性のため、およびファイル サイズを妥当な制限内に維持するために行われます。ところがこれは、プロジェクトの 1 つを使用するユーザを煩わせることになる可能性があります。LAS データセット を使用すると、プロジェクトの LAS ファイルのコレクションを参照し、それらを全体として操作することができます。[LAS データセットの作成(Create LAS Dataset)] ジオプロセシング ツールを使用して LAS データセットを作成します。
[LAS データセットの作成(Create LAS Dataset)] ツールには、統計情報計算のオプションがあります。このオプションを指定しない場合は、参照される LAS ファイルのヘッダ レコードだけが読み込まれるため、LAS データセットは迅速に作成されます。統計情報を計算するには、参照される LAS ファイルの完全なスキャンが必要になります。統計情報の計算に要する時間は、LAS ファイル内のポイント数に応じて変わりますが、それによってはるかに多くの情報が得られます。時間に制約がある場合を除いて、統計情報を収集することが推奨されます。
LAS データセットを作成したら、カタログ ウィンドウから [LAS データセット プロパティ] ダイアログ ボックスを開きます。このダイアログ ボックスは、LAS データセット全体についての情報に加えて、データセットに属する特定の LAS ファイルの詳細を表示します。ダイアログ ボックスの [LAS ファイル] タブに移動します。
[LAS ファイル] タブの中央にある [ポイント間隔] 列を探します。これは、各ファイルの推定ポイント(または、リターン)間隔です。ソース データの X、Y 単位で報告されます。LAS データセットを作成するときに統計情報を計算すると、推定がさらに正確になります。
リターン間隔はパルス間隔よりも少し密になる可能性があります。これは、個々のレーザー パルスが複数のリターンを生成することがあるためです。
他の統計情報に加えて、LAS ファイルのグラフィック情報を取得するには、[ポイント ファイルの空間統計情報(Point File Information)] ジオプロセシング ツールを使用します。
ポイント ファイルの空間統計情報(Point File Information)
[ポイント ファイルの空間統計情報(Point File Information)] ジオプロセシング ツールは、ポイント データ ファイルに関する基本的統計情報とグラフィック情報を報告します。このツールの主要な目的は、データの正確さの再確認を可能にすることです。LAS データセットの他に、スタンドアロンの LAS 形式ファイルと ASCII 形式ファイルが入力としてサポートされています。フォルダ名を指定すると、そのフォルダにある指定した拡張子を持つファイルがすべて読み込まれます。LAS 形式の LIDAR データを使用しているときは、LAS データセットを作成し、それをツールへの入力として使用することをお勧めします。
LAS データセットの各ファイルも含めて、入力ポイント ファイルそれぞれに、ターゲット フィーチャクラスの属性とともに、ポリゴンが 1 つ出力されます。このポリゴンは、ファイル内のデータの X、Y 範囲(境界ボックス)をグラフィカルに記述します。属性には、ファイル名、ポイント数、Z 最小値、Z 最大値、ポイント間隔などがあります。
[ポイント ファイルの空間統計情報(Point File Information)] によって報告されるポイント間隔は推定であり、説明が必要です。統計情報および ASCII ポイント データを持たない LAS については、ファイルの境界ボックスの面積をポイント数と単純に比較して、おおまかな推定が行われています。調査対象のファイルの表示範囲にまんべんなくデータが存在するときに一番正確になりますが、それ以外の場合は誤解を招くような結果になる可能性があります。このような状況では、報告されたポイント間隔は、ファイル集合の傾向をみるときの概要としての意味合いの方が大きくなります。LAS 形式データを使用しているときのポイント間隔推定の信頼性を高めるために、統計情報を持つ LAS データセットを作成し、それをツールへの入力として使用することをお勧めします。
出力フィーチャクラスの操作で便利なのは、それを ArcMap で表示し、属性テーブルを開いて、ポイント間隔フィールドを昇順に並べ替えることです。等級カラー ランプを使用してポイント間隔フィールドをシンボル表示することもできます。下図では、LAS 範囲ポリゴンが、ポイント間隔の推定値に基づいて、カラー ランプによりシンボル表示されています。赤くシンボル表示されたポリゴンはポイントの密度が高いことを示しています。
LIDAR ポイントに対して実行された分類を調査することもできます。この重要な手順は、通常、LIDAR データ プロバイダーによって行われます。分類は、LAS ファイルのクラス コードを使用して管理されます。これらのコードを使用して、地面のリターンと非地面のリターンを区別することができます。[ポイント ファイルの空間統計情報(Point File Information)] ダイアログ ボックスで [クラス コード別に集計] オプションを選択すると、出力属性テーブルには、各 LAS ファイルに見つかった各クラス コードの要約統計情報が格納されます。各 LAS ファイル内のクラス コードと、各クラス コードに関連するポイント情報を調査するときに、このオプションを使用します。このオプションはたとえば、すべてのポイントをまとめてではなく、特にクラス 2(地表)ポイントの Z 範囲をチェックするために使用できます。すべてのポイントをまとめてチェックすると、特にクラス 7(ノイズ)が含まれている場合には、データに間違いがあるという誤った判断を下す可能性があります。
[ポイント ファイルの空間統計情報(Point File Information)] による確認作業ですべてが許容できたと仮定すると、次のステップは、[LAS ポイント統計をラスタに出力(LAS Point Statistics as Raster)] ジオプロセシング ツールを使用して、ポイント分布の詳細なビューを作成することです。
LAS ポイント統計をラスタに出力(LAS Point Statistics As Raster)
[LAS ポイント統計をラスタに出力(LAS Point Statistics as Raster)] ジオプロセシング ツールでは、さまざまな LIDAR ポイント メトリクスの空間分布を確認することができます。これは、出力ラスタの各セルに入るポイントを特徴付けすることによって行われます。いくつかの方法でポイントを特徴付けることができます。
- パルス数
- リターン数
- 主要なリターン数
- 最大リターン
- 主要クラス
- 強度範囲
- Z 範囲
ポイントのカバレッジと密度を評価するためには、パルス数が適切なオプションになります。このオプションでは、セル内に存在する最後のリターンの数をセル値として割り当てます。最初に、LAS データセットを入力し、[PULSE_COUNT] をメソッドとして選択します。サンプリングでは、[CELLSIZE] を選択します。出力ラスタのセル サイズは平均ポイント間隔にするとよいと思われるかもしれませんが、LIDAR ポイントは均一に分布していないため、そうすると一般に、空のセル、すなわち NoData のセルが多数生じることになります。また、出力ラスタが無駄に巨大になることもあります。代わりに、平均ポイント間隔よりは数倍大きく、ギャップまたは隙間を識別できる程度には小さくて、追加調査が可能なセル サイズの方が適しています。妥当なサイズは、ポイント間隔の 4 倍です。たとえば、データのサンプリング間隔が 1 メートルで、セル サイズを 4 に設定した場合は、1 つのセルに平均 16 個のパルスが存在することを期待できます。
さまざまなタイプのポイントの密度を評価することもできます。ほとんどの場合、おそらくはすべてのリターンについて密度をチェックするだけでしょうが、特定のクラスに属するポイントを調べると便利な場合があります。たとえば、地面ポイントのパルス数を見ることによって、植生地域では地面への水の浸透率がどの程度か把握できます。使用するポイントのタイプを制御するには、LAS データセット レイヤの [フィルタ] タブでフィルタ条件を設定します。レイヤに設定されたポイント フィルタ プロパティが、ツールで使用されます。レイヤではなくデータセットを使用する場合、フィルタは適用されません。
ラスタを作成したら、ArcMap で表示します。カラー ランプ レンダラを使用してラスタを表示して、ポイント数の多いセルと少ないセルを区別しやすくします。また、NoData の色を目立つ色に設定することで、密度の分散とデータの隙間を調べることができます。密度の分散とデータの隙間を調べます。疑問な点があれば、データベンダにお問い合わせください。
下図では、黒い部分は NoData が存在する領域を表しており、赤い部分は LIDAR サンプルの密度が高い領域を表しています。