GWR の詳細

地理空間加重回帰分析(GWR)は、地理学などの分野での利用が増えている空間回帰分析技法の 1 つです。GWR は、データセット内のあらゆるフィーチャに回帰方程式をあてはめることで、理解または予測しようとしている変数またはプロセスのローカル モデルを作成します。GWR では、各ターゲット フィーチャのバンド幅内に存在するフィーチャの従属変数独立変数を組み込んで、このような別々の方程式を作成します。バンド幅の形状とサイズは、[カーネル タイプ][バンド幅手法][距離][近傍数] の各パラメータでユーザが指定した値によって変わります。

実装のメモとヒント

最小二乗法のようなグローバル回帰モデルでは、複数の変数が多重共線性を示すと(複数の変数が冗長であるか、同じ「ストーリー」を語るとき)、結果は信頼できません。GWR は、データセット内のフィーチャごとにローカル回帰方程式を作成します。特定の独立変数の値が空間的にクラスタを形成すると、ローカル多重共線性の問題が生じる可能性が非常に高くなります。出力フィーチャクラスの条件数は、いつローカル多重共線性によって結果が不安定になるかを示しています。目安として、条件数が 30 より大きい場合、NULL と等しい場合、シェープファイルでは -1.7976931348623158e+308 と等しい場合、フィーチャの結果は信頼できません。

モデル設計の深刻なエラーは、多くの場合、グローバルまたはローカルに多重共線性の問題があることを示しています。問題の所在を決定するには、最小二乗法を使用してモデルを実行し、各独立変数の VIF 値を調査します。大きな VIF 値がある場合(たとえば 7.5 以上)、グローバル多重共線性によって GWR では解を導けなくなっています。しかし、もっと可能性が高いのは、ローカル多重共線性の問題です。各独立変数の主題図を作成してみてください。主題図で同一値が空間的にクラスタを形成している場合は、モデルからそのような変数を除外するか、別の独立変数と組み合わせて値のばらつきを増やします。たとえば、住宅の価値をモデル化していて、寝室と風呂の両方に変数がある場合は、両方を組み合わせて値のばらつきを増やすか、それぞれを風呂と寝室の広さとして表します。GWR モデルの作成時に、空間様式 ダミー/バイナリ変数、空間クラスタ化カテゴリ/名目変数、または可能な値がごくわずかしかない変数を使用するのは避けてください。

また、ローカル多重共線性の問題があると、[バンド幅手法] として [AIC] および [CV] を選択した場合に、近傍の最適な距離または数を解決できません。具体的な距離または近傍数を指定して、出力フィーチャクラスの条件数を調べ、ローカル多重共線性の問題と関係があるのはどのフィーチャか(条件数が 30 を超えるか)確認します。このような問題のあるフィーチャを一時的に除外して、近傍の最適な距離または数を見つけたいと思うかもしれません。しかし、条件数が 30 を超えるような結果は信頼できないことを忘れないでください。

条件数は、線形方程式の解が行列係数の小さな変化に対してどれぐらい敏感かを示しています。条件数が 30 を超える個々のフィーチャの結果は、パラメータ推定の分散に含められません。これは標準誤差診断、グローバルなシグマ、標準残差に影響を与えます。

この条件数の閾値を変更するには、次のレジストリを再設定します。

[HKEY_CURRENT_USER\Software\ESRI\GeoStatisticalExtension\DefaultParams\GWR]

"ConditionNumberThreshold"="40"

GWR のパラメータ推定と予測値は、空間加重関数 exp(-d^2/b^2) を使用して計算されます。この加重関数は、GWR の各種ソフトウェア実装によって異なることがあります。そのため、Esri の [地理空間加重回帰分析(Geographically Weighted Regression)] ツールの結果は他の GWR ソフトウェア パッケージの結果と正確に一致しないことがあります。

参考資料

最小二乗法による回帰分析と地理空間加重回帰分析の両方について学習するのに役立つ優れた資料がいくつかあります。まず、「回帰分析の基本」を読むか、Esri Virtual Campus にある 1 時間の無料 Web セミナー「Regression Analysis Basics」を見てください。次に、「Regression Analysis tutorial」を学習してください。自分で回帰モデルを作成しはじめたら、「最小二乗法の結果の解釈」と「GWR の結果の解釈」を参照すると、最小二乗法の出力と診断結果を理解するのに役立ちます。

その他の資料

Fotheringham, Stewart A.、Chris Brunsdon、Martin Charlton 共著、『Geographically Weighted Regression: the analysis of spatially varying relationships』(John Wiley& Sons、2002).

Mitchell, Andy『The Esri Guide to GIS Analysis, Volume 2』Esri Press、2005 年

5/10/2014