トランスフォーム(Transform)(カバレッジ)の仕組み
説明
[トランスフォーム(Transform)] ツールはデータをある座標系から別の座標系に変換します。このコマンドはデジタイザ単位(インチであることが多い)で生成されたカバレッジを、デジタイズ前の地図原稿で示されている、現実世界の単位に変換するために使用されます。これらの現実世界の位置は特定の投影法で示されています。たとえば、お使いのベースマップの投影法はコントロール ポイントの位置がメートル単位で計測されている UTM かもしれません。
変換を実行するには、カバレッジ内の少なくとも 2 つのティックを現実世界の位置に登録する必要があります。これらの現実世界の位置はベースマップ座標系を使用してフィートまたはメートル単位で計測するか、緯度経度の交点に配置する場合があります。これらの位置が緯度経度を参照している場合、[投影変換] ツールを使用してコントロール ポイントをフィートまたはメートル単位で計測された、ベースマップに対応した座標系に変換します。この作業は、デジタイズされたカバレッジを変換する前に行います。
最初にデータを変換する際は、ソース マップと同じ投影法で変換します。次に、[投影変換] ツールを使用してカバレッジを別の地図投影法に変換することができます。
[トランスフォーム(Transform)] ツールは、[入力カバレッジ] のティックの座標と [出力カバレッジ] の対応するティックとの比較に基づいて動作します。ティック ID は比較されるティックを特定します。必要なティックの最小数は、使用する変換オプションによって異なります。ティックは変換のコントロール ポイントとして扱われ、変換式では変換されません。出力ティックの座標は、変換後も変わりません。ただし、入力ティックと一致するフィーチャは通常、出力ティックと一致しません。変換後に、[出力カバレッジ] のティックと一致するようにフィーチャを調整する必要がある場合があります。
[トランスフォーム(Transform)] ツールでは [アフィン(AFFINE)] 変換機能をデフォルトで使用して、[入力カバレッジ] のカバレッジ座標を [出力カバレッジ] に変換します。アフィン変換を計算するには、少なくとも 3 つのティックが必要です。
アフィン変換では、データの縮尺変換、スキュー歪みの変換、回転、および移動が可能です。次に、実行可能な 4 つの変換を示します。
アフィン変換関数は、次のとおりです。
x’ = Ax + By + C
パラメータ A ~ F はコントロール ポイントによって決まります。
y’ = Dx + Ey + F
次にカバレッジのすべての座標に適用します。
x および y は [入力カバレッジ] の座標を表し、x' および y' は [出力カバレッジ] の座標を表します。A、B、C、D、E、および F は、[入力カバレッジ] のティックの位置と [出力カバレッジ] のティックの位置を比較することによって決まります。これらは、ティック座標の縮尺やスキュー歪みを変換、回転、移動します。
[トランスフォーム(Transform)] ツールは、6 つのパラメータとその幾何学的な解釈をレポートします。次に、アフィン変換の出力レポートの一部の例を示します。
カバレッジ in_cov_name の座標変換
Scale (X,Y) = (246.140,255.702) Skew (degrees) = (-0.061)
Rotation (degrees) = (0.334) Translation = (2890.267,3679.906)
RMS Error (input, output) = (0.084,20.592)
Affine X = Ax + By + C
Y = Dx + Ey + F
A = 246.135 B = -1.763 C = 2890.267
D = 1.434 E = 255.696 F = 3679.906
レポートのセクションには、変換式のパラメータの一覧が表示されます。式のパラメータを解釈して、幾何学的に何が起きているのかを理解することができます。レポートの最初のセクションでは、縮尺やスキュー歪みの変換、および回転の解釈された値を表示します。この幾何学的な動きに関するアプリケーションの順番を並べ替えると、解釈された値が変化します。ただし、最終的な結果と式のパラメータは常に同じです。解釈は、(1)縮尺の変換、(2)X 方向のスキュー歪みの変換、(3)軸の周りを反時計回りに回転、の順番で実行されます。移動の値は解釈されませんが、式の C および F の移動パラメータが該当します。[トランスフォーム(Transform)] ツールは、アフィン方程式のパラメータを次の方法で解釈します。
A = mx · cos t
B = my · (k · cos t - sin t)
D = mx · sin t
E = my · (k · sin t + cos t)
C = translation in x direction
F = translation in y direction
where
mx = change of scale in x direction
my = change of scale in y direction
k = shear factor along the x-axis = tan (skew angle) (the skew angle is measured from the y-axis)
t = rotation angle, measured counterclockwise from the x-axis
回転角度は、固定の X、Y 座標系に関するデータの回転を対象としています。前の図を参照すると、元のデータは 45 度回転しています。負の値は、データが X 軸から時計回りに回転していることを表しています。
[相似(SIMILARITY)] 変換では、データの縮尺、回転、および移動が可能です。軸別の縮尺変換やスキュー変換は行いません。相似変換には、少なくとも 2 つのコントロール ポイントが必要です。次に、以前アフィン変換で変換したのと同じカバレッジを使用した相似変換のレポートを示します。
カバレッジ in_cov_name の座標変換
Scale (X,Y) = (249.927,249.927)
Rotation (degrees) = (0.362) Translation = (2855.407,3715.168)
RMS Error (input, output) = (0.118,29.398)
Similarity X = Ax + By + C
Y = -Bx + Ay + F
A = 249.922 B = -1.578
C = 2855.407 F = 3715.168
X および Y の縮尺値が同じであることを確認します。相似変換はデータが非直交に移動することを許容していないため、スキュー歪みの値はレポートされません。
相似変換関数は、次のとおりです。
x’ = Ax + By + C
y’ = -Bx + Ay + F
where
A = s · cos t
B = s · sin t
C = translation in x direction
F = translation in y direction
and
s = scale change (same in x and y directions)
t = rotation angle, measured counterclockwise from the x-axis
[アフィン(AFFINE)] 変換に関する説明と同様、回転角度は固定の X、Y 座標系に関するデータの回転を対象としています。前の図を参照すると、元のデータは 45 度回転しています。負の値は、データが X 軸から時計回りに計測したとおりに回転していることを表しています。
[射影(PROJECTIVE)] 変換はさらに複雑な数式に基づいて実行され、少なくとも 4 つのティックを必要とします。
x’ = (Ax + By + C) / (Gx + Hy + 1) y’ = (Dx + Ey + F) / (Gx + Hy + 1)
[射影(PROJECTIVE)] 変換のレポートには適切な縮尺、RMS エラー、および式のパラメータが含まれます。解釈が複雑なため、射影変換のパラメータは解釈されません。詳細については、トピックの最後のリファレンスに一覧で表示される写真測量テキストのいずれかをご参照ください。次に射影変換のサンプルの出力レポートを示します。
カバレッジ in_cov_name の座標変換
Approximate scale = 1479.087
RMS Error (input, output) = (0.040,60.878)
2D Projective X = (Ax + By + C) / (Gx + Hy + 1)
Y = (Dx + Ey + F) / (Gx + Hy + 1)
A = 55.667 B = -718.999 C = 2125052.558
D = -199.525 E = 1385.541 F = 317759.475
G = -0.001 H = 0.000
Principal point of input (xp,yp) = (2.000,16.946)
Exposure center of output(Xc,Yc) = (2127791.000,343183.000)
主要ポイントおよび照射の中心は [入力カバレッジ] ティック ファイルの最初のティックに対応します。別のポイントを使用する場合(データセットの中心など)、ファイルの最初のティックであることを確認してください。
RMS(Root Mean Square)エラーは、実行した変換ごとに計算され、得られた変換結果の適切さの尺度となります。次の例は、4 つの出力コントロール ポイント(ティック)と変換された入力コントロール ポイントの相対的な位置を示します。
RMS エラーは、[出力カバレッジ] のティックと [入力カバレッジ] のティックの変換された位置との間のエラーを計測します。
変換は最小二乗法に基づいて得られるため、ティックの数が必要以上に多くなることもあります。
各変換の RMS エラーは、[入力カバレッジ] 単位(0.031 インチなど)および [出力カバレッジ] 単位(37.465 フィートなど)の両方でレポートされます。
RMS エラー(入力、出力)=(0.031、37.465)
完全な変換では、RMS エラーがゼロになります。0.000 の値が得られない場合でも、可能な限り RMS エラーを低く抑えるようにしてください。許容できる最大のエラー値を確立し維持するのが最も良い方法です。許容できる値は、元のデータの正確性とソース マップの縮尺によって異なります。高い RMS エラー値は、古いティックと新しいティックの対応する位置が一致していないことを示しています。RMS エラーが確立された値より高い場合、[出力カバレッジ] の伸縮が不適切である変換上の問題が考えられます。
レポートの最後の部分は、入力ティックと出力ティックの座標およびその X、Y の誤差を表示します(下表を参照)。変換パラメータは入力ティックと出力ティックの間の最適な値を示します。変換パラメータに基づいて実際の入力ティックを変換した場合、変換された出力位置は実際の出力ティックの位置と一致しません。X および Y の誤差は、実際の位置と出力ティックの変換された位置との間のフィットの度合いを示します。X および Y の誤差を確認することで間違いに気づく場合もあります。
tic id input x input y output x output y x error y error ------------------------------------------------------------------------ 1 2.000 16.946 2127791.000 343183.000 14.463 75.499 2 12.764 16.821 2143469.000 343326.000 -31.043 -85.363 3 2.052 1.976 2128000.000 320680.000 -36.290 -2.353 4 12.922 2.013 2143729.000 320912.000 20.245 -6.163 5 2.082 9.442 2127944.000 332015.000 22.016 -74.699 6 12.662 9.442 2143320.000 332015.000 10.609 93.079
例
この例では、カバレッジをデジタイザ単位から現実世界の座標に変換します。元のカバレッジ INCHCOV には、デジタイザのインチ単位で測定された次のコントロール ポイントが存在します。
IDTIC XTIC YTIC 1 2.000 16.946 2 12.764 16.821 3 2.052 1.976 4 12.922 2.013 5 2.082 9.442 6 12.662 9.442
使用しているベースマップは、コントロール ポイントがフィート単位で計測された State Plane 座標系です。各ティックは次の位置に対応しています。
Tic-IDs X Coordinates Y Coordinates 1 2,127,791 343,183 2 2,143,469 343,326 3 2,128,000 320,680 4 2,143,729 320,912 5 2,127,944 332,015 6 2,143,320 332,015
[トランスフォーム(Transform)] ツールを実行する前に、[出力カバレッジ] が存在している必要があります。[新規カバレッジの作成(Create Coverage)] ツールを使用して [出力カバレッジ] を作成し、必要に応じて TIC ファイルおよび BND ファイルを [入力カバレッジ] からコピーします。オプションで、[ジェネレート ファイル → カバレッジ(Generate)] ツールを使用して、必要な場所にティックを含む新たなカバレッジを生成することができます。
[出力カバレッジ] のティック ファイルには、[出力カバレッジ] で保持される各ティックの X、Y 座標が含まれている必要があります。この場合、State Plane 座標系におけるティックの位置になります。ArcMap、ArcInfo Workstation の TABLES または INFO モジュールでティックの座標を調整することができます。
新たなティックが生成されると、デジタイズされたカバレッジ内のフィーチャを現実世界の単位に変換することができます。[トランスフォーム(Transform)] ツールを使用して、インチ単位で参照する State Plane 投影カバレッジ(INCHCOV)をフィート単位で参照する State Plane 投影カバレッジ(STATECOV)に変換します。次に [アフィン(AFFINE)] 変換の例を示します。
Scale (X,Y) = (1452.317,1508.433) Skew (degrees) = (0.416)
Rotation (degrees) = (0.218) Translation = (2124994.654,317664.385)
RMS Error (input, output) = (0.048,71.614)
Affine X = Ax + By + C
Y = Dx + Ey + F
A = 1452.230 B = -5.526 C = 2124994.654
D = 15.858 E = 1508.462 F = 317664.385
tic id input x input y
output x output y x error y error
--------------------------------------------------
1 2.000 16.946
2127791.000 343183.000 14.463 75.499
2 12.764 16.821
2143469.000 343326.000 -31.043 -85.363
3 2.052 1.976
2128000.000 320680.000 -36.290 -2.353
4 12.922 2.013
2143729.000 320912.000 20.245 -6.163
5 2.082 9.442
2127944.000 332015.000 22.016 -74.699
6 12.662 9.442
2143320.000 332015.000 10.609 93.079
次に、同じカバレッジに対して [射影(PROJECTIVE)] 変換を実行した例を示します。[射影(PROJECTIVE)] オプションは通常、元のカバレッジが航空写真から直接デジタイズされたときにのみ使用されます。
カバレッジ INCHCOV の座標変換
Approximate scale = 1479.087
RMS Error (input, output) = (0.040,60.878)
2D Projective X = (Ax + By + C) / (Gx + Hy + 1)
Y = (Dx + Ey + F) / (Gx + Hy + 1)
A = 55.667 B = -718.999 C = 2125052.558
D = -199.525 E = 1385.541 F = 317759.475
G = -0.001 H = 0.000
Principal point of input (xp,yp) = (2.000,16.946)
Exposure center of output(Xc,Yc) = (2127791.000,343183.000)
tic id input x input y
output x output y x error y error
--------------------------------------------------
1 2.000 16.946
2127791.000 343183.000 -4.438 45.252
2 12.764 16.821
2143469.000 343326.000 -11.447 -36.202
3 2.052 1.976
2128000.000 320680.000 -17.300 46.421
4 12.922 2.013
2143729.000 320912.000 1.704 -36.962
5 2.082 9.442
2127944.000 332015.000 21.787 -93.410
6 12.662 9.442
2143320.000 332015.000 9.694 74.901
最後に、同じカバレッジを [相似(SIMILARITY)] オプションを使用して変換した例を示します。
カバレッジ INCHCOV の座標変換
Scale (X,Y) = (1483.794,1483.794)
Rotation (degrees) = (0.377) Translation = (2124800.900,317942.729)
RMS Error (input,output) = (0.162,240.958)
Similarity X = Ax + By + C
Y = -Bx + Ay + F
A = 1483.762 B = -9.765
C = 2124800.900 F = 317942.729
tic id input x input y
output x output y x error y error
--------------------------------------------------
1 2.000 16.946
2127791.000 343183.000 -188.053 -76.916
2 12.764 16.821
2143469.000 343326.000 106.378 -300.277
3 2.052 1.976
2128000.000 320680.000 -173.717 214.680
4 12.922 2.013
2143729.000 320912.000 225.411 143.724
5 2.082 9.442
2127944.000 332015.000 -146.109 -42.262
6 12.662 9.442
2143320.000 332015.000 176.089 61.051
次の例では、[アフィン(AFFINE)] 変換を使用してカバレッジを反転します。
カバレッジ flag の座標変換
Scale (X,Y) = (1.000,-1.000) Skew (degrees) = (0.000)
*** Negative Y scaling indicates reflection around X axis. ***
Rotation (degrees) = (180.000) Translation = (800.000,0.000)
RMS Error (input, output) = (0.000,0.000)
Affine X = Ax + By + C
Y = Dx + Ey + F
A = -1.000 B = 0.000 C = 800.000
D = 0.000 E = 1.000 F = 0.000
tic id input x input y
output x output y x error y error
--------------------------------------------------
1 700.000 100.000
100.000 100.000 0.000 0.000
2 700.000 800.000
100.000 800.000 0.000 0.000
3 100.000 800.000
700.000 800.000 0.000 0.000
4 100.000 100.000
700.000 100.000 0.000 0.000
反映に関する出力レポートのメッセージに注意してください。カバレッジの動きについて、下の図で示します。長方形 I が [入力カバレッジ] です。Y の縮尺値 -1 が座標に適用されます。これにより、II の長方形が出力されます。スキュー歪みの係数はないため、ポイントは 180 度回転します。これにより III の位置になります。最後のステップ(記載なし)はカバレッジの移動です。
参考文献
Maling, D.H.著『Coordinate Systems and Map Projections』(George Philip、1973)
Maling, D.H.著「Coordinate systems and map projections for GIS」(出典: Maguire, D.J.、M.F. Goodchild、D.W. Rhind 共編『Geographical Information Systems: principles and applications』Vol. 1、pp. 135-146、Longman Group UK Ltd.、1991)
Moffitt, F.H.、E.M. Mikhail 共著『Photogrammetry』(Third Edition、Harper & Row, Inc.、1980)
Pettofrezzo, A.J.著『Matrices and Transformations』(Dover Publications, Inc.、1966)
Slama, C.C.、C. Theurer、S.W. Henriksen 共編『Manual of Photogrammetry』(4th Edition、Chapter XIV、pp. 729-731、ASPRS、1980)