ArcGIS for Server とは
ArcGIS for Server は、組織内の他のユーザが、または必要に応じてインターネット接続により任意のユーザが、地理情報を利用できるようにするソフトウェアです。これは Web サービスを使用して実現されます。Web サービスを使用することにより、高性能なサーバ コンピュータは他のデバイスから送信された情報のリクエストを受信して処理できます。ArcGIS for Server は、タブレット、スマートフォン、ラップトップ、デスクトップ ワークステーション、および Web サービスにアクセスできる他のすべてのデバイスに GIS を開放します。
ArcGIS for Server を開始するには、ハードウェア、ソフトウェア、およびデータを準備する必要があります。次に、GIS Web サービスを設定できます。最後に、さまざまな種類のアプリケーションを使用してサービスを利用できます。
ハードウェア、ソフトウェア、およびデータの準備
通常、サーバに使用するハードウェアは他のデスクトップ コンピュータよりも高性能です。ArcGIS 10.1 for Server には、64 ビット オペレーティング システムを実行できるコンピュータが必要です。ArcGIS for Server アーキテクチャは拡張可能です。つまり、処理能力がさらに必要な場合に複数のコンピュータを追加できます。
組織の要件によっては、インターネット経由でサーバにアクセスできるように IT スタッフの支援を受ける必要がある場合があります。ハードウェアと環境を計画するときは、ArcGIS for Server を仮想コンピュータ、または Amazon EC2 などの商用クラウド プラットフォーム上にも配置できる点に注意してください。
ArcGIS for Server をインストールしたら、すぐに使用できます。また、ArcGIS Web Adaptor をインストールして、組織の既存の Web サーバと統合することもできます。また、GIS Web サービスを公開するために、組織の少なくとも 1 台のコンピュータに ArcGIS for Desktop がインストールされている必要もあります。このコンピュータはサーバである必要はありません。
GIS Web サービスの公開
ArcGIS for Desktop を使用したことがある場合は、ArcMap や ArcGlobe などのアプリケーションを使用して GIS データを表示および解析する方法を理解していることでしょう。Web サービスを ArcGIS for Server に公開するときにも、これらのアプリケーションを使用します。マップ、ジオプロセシング モデル、モザイク データセット、および ArcGIS for Desktop の他の GIS リソースを作成し、簡単なウィザードを使用してこれらを Web サービスとして共有できます。
共有処理を実行中、ArcGIS は、公開しているリソースの潜在的なパフォーマンスの問題を通知します。また、登録されたデータの場所のリストを確認して、リソースがサーバに移動された後にパスを修正する必要があるかどうかも判定されます。
ArcGIS for Server で公開できるリソースの種類を下に示します。
|
GIS リソース |
ArcGIS for Server で実行できる機能 |
GIS リソースを作成する ArcGIS for Desktop アプリケーション |
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マップ ドキュメント | マッピング、ネットワーク解析、WCS（Web Coverage Service）の公開、WFS（Web Feature Service）の公開、WMS（Web Map Service）の公開、WMTS（Web Map Tile Service）の公開、モバイル デバイスへのデータ公開、KML の公開、ジオデータベース データの取得とレプリケーション、フィーチャ アクセスの公開、スケマティクスの公開 | ArcMap |
住所ロケータ | ジオコーディング | ArcCatalog、または ArcMap のカタログ ウィンドウ |
ジオデータベース | ジオデータベースのクエリ、抽出、およびレプリケーション、WCS の公開、WFS の公開 | ArcCatalog、または ArcMap のカタログ ウィンドウ |
ジオプロセシング モデルまたはジオプロセシング ツール | ジオプロセシング、WPS（Web Processing Service）の公開 | ArcMap（[結果] ウィンドウのジオプロセシング結果） |
ArcGlobe ドキュメント | 3D マッピング | ArcGlobe |
ラスタ データセット、モザイク データセット、ラスタ データセットまたはモザイク データセットを参照するレイヤ ファイル | 画像の公開、WCS の公開、WMS の公開 | ArcCatalog、または ArcMap のカタログ ウィンドウ |
GIS コンテンツのフォルダおよびジオデータベース | 組織の GIS コンテンツの検索可能なインデックスの作成 | ArcMap |
即座に公開しない場合は（サーバ コンピュータに即座にアクセスできない場合など）、代わりにサービス定義ファイルを保存して後で公開できます。サービス定義には、別の時期にサービスを公開するために必要なすべてのデータ パスとプロパティが含まれています。すべてのソース データを含めることができます。これにより、サービスを 1 つの送信可能なファイル内に完全にパッケージ化することができます。
公開プロセスでは、利用者がサービスを利用できるようにするための各種方法を定義するケーパビリティを有効にします。たとえば、フィーチャ アクセスはマップ サービス内のベクタ フィーチャを Web ユーザが編集できるようにする一般的なケーパビリティです。ケーパビリティの別の例に WMS があります。これは、OGC（Open Geospatial Consortium）の WMS（Web Map Service）仕様を使用してサービスを公開します。
使用可能なサービスとケーパビリティの詳細については、「公開できるサービスの種類」をご参照ください。
正確な機能や必要なビジネス ロジックが Web サービスで提供されていないことがわかった場合は、サーバ オブジェクト エクステンション（SOE）を使用して拡張できます。SOE は ArcObjects（Esri 製品ファミリの構築に使用されたコンポーネントの幅広い組み合わせ）を使用して Web サービスの基本機能を拡張します。SOE はカスタムな開発を必要とする高度なオプションですが、一度記述してしまうと、サーバへの配置や他のユーザとの共有は簡単に行えます。SOE を実行するために、ArcGIS for Server 以外の特殊なソフトウェアを用意する必要はありません。
GIS Web サービスの使用
Web サービスを稼動させたら、HTTP（Hyper Text Transfer Protocol）を使用して通信できる任意のアプリケーション、デバイス、または API で Web サービスを使用できます。
- ArcGIS.com マップ ビューアを使用すると、サービスを表示するオンライン マップを作成して保存できます。必要に応じて、サービスを他のサービスとオーバーレイして、マップを ArcGIS Online（Esri のオンライン コンテンツのクラウドでホストされたリポジトリ）に保存できます。
- ArcGIS Viewer for Flex と ArcGIS Viewer for Silverlight では、サービスを使用して見栄えの良い、機能的な Web マッピング アプリケーションを構築するための対話型のウィザードを使用できます。
- JavaScript、Flex、Silverlight、iOS、Android、および Windows Phone 用の ArcGIS API を使用すると、ユーザが設計したインタフェース内で広範な Web サービスを使用するカスタム アプリケーションを開発できます。
- ArcMap や ArcGlobe などの ArcGIS for Desktop アプリケーションは、ArcGIS for Server で公開された Web サービスを使用するように設計されています。多くの場合、これらのアプリケーションでのサービスの使用は [データの追加] ボタンをクリックするのと同様に簡単です。
- SOAP または REST Web サービス リクエストを送信できる他のアプリケーションは ArcGIS for Server に接続できます。サポートされるクライアントの範囲は、最寄りの食料品店を検索するスマートフォンやタブレットのアプリケーションから、顧客管理やリソース計画用のエンタープライズ デスクトップ アプリケーションまでにわたります。
サーバの保守
サーバを長期にわたって使用するにしたがって、設定の調整、サービスの追加と削除、セキュリティ ルールの設定を行う必要があります。ArcGIS Server Manager は ArcGIS for Server のすべてのインストールに付属の Web アプリケーションで、サーバ管理用の直観的なポイントアンドクリックのインタフェースを備えています。Manager を使用して、サーバ ログの表示、サービスの停止と開始、サービス定義の公開、セキュリティのためのユーザとロールの定義、および他の同様のタスクを行うことができます。
Manager を簡単に使用できるのと同様に、スクリプトを使用してサーバを自動的に管理したい場合があります。ArcGIS for Server には、REST ベースの管理用 API があり、選択したスクリプト言語を使用してサーバ管理タスクを自動化できます。たとえば、サービスの健全度を定期的に確認して、サービスがダウンしていることを検出した場合に電子メールをユーザに送信する Python スクリプトを記述できます。このヘルプ システムには、サーバ管理をスクリプト化する方法のさまざまな例が記載されています。
まとめ
ArcGIS for Server は、Web サービスを使用して GIS をさまざまな種類のデバイスに開放します。ArcGIS を使用して、マップ ドキュメントやジオプロセシング モデルなどの熟知しているリソースを取得し、サーバで公開して GIS Web サービスを作成できます。これらのサービスは、HTTP を使用して Web サービスを呼び出すことができる任意のアプリケーションやデバイスで利用できます。
ArcGIS for Server には、管理用の Manager アプリケーションと、サーバの管理、セキュリティ、ログへの記録、および他の動作に使用できる API が用意されています。
このヘルプ システムでは、上記のすべてのトピックについて詳細に説明しています。
注意:このヘルプ システム全体を読みやすくするために、用語「ArcGIS for Server」は製品名を表すために、「ArcGIS Server」はテクノロジ自体（つまり、コンピュータで実行されているソフトウェア）を表すためにそれぞれ使用されています。このような入門トピックでは、多くの場合「ArcGIS for Server」が使用されていますが、その下位レベルの技術的トピックでは「ArcGIS Server」が多く使用されています。